海籠り志カウンセラーのみやです。
今回も、お越しくださり、ありがとうございます!!
先日、
という本を読みました。
1964年から1989年の昭和天皇の崩御まで25年間、昭和天皇の料理番を務められた谷部金次郎さんという方が書かれた回想録です。
職人として成長していく過程、昭和天皇の日常の食事や、宮中の儀式の時などの料理、昭和天皇や他の皇族方のエピソードなど、普段はなかなか知る機会のないことが書かれていて、楽しく読みました。
昭和の懐かしい空気感が伝わってくるような、読んでいて心が洗われて、清々しい気持ちになれるそんな一冊でした。
そう感じたのは、やりがいを持って仕事に取り組み、著者の職人として成長していく姿や、昭和天皇への想いが、そう感じさせたからでした。
公務員だけど、職人
天皇の料理番は、国家公務員です。
身分としては、公務員なんですね。
その仕事を知るにつれ、一般の公務員とは異なるというか、むしろ真逆でした。
一般の公務員は、数年ペースで異動があります。
まるで転職のような、以前の部署とは全く違う仕事をすることも、珍しくありません。
でも、天皇の料理番は、毎日天皇陛下のお食事を作り続けます。
そうして、日々、料理の腕を磨き続けていきます。
突然ですが、天皇陛下は、普段、どんなものを召し上がられていると思いますか?
わたしは、特別なメニューを召し上がられてるのかな、と思っていました。
実は、普段の食事は、普通の家庭と何も変わらない、焼き魚やおひたしなど、意外と質素な内容でした。
著者の谷部さんは、作る料理が普通のものばかりだったので、
「これが本当に自分のやりたい料理なのか」
と悩んだりしました。
でも、経験を積んでいくうちに、なんでもない日々の当たり前の料理を本当に美味しく作ることも、料理人の大事な仕事ではないか、と思うようになったそうです。
特別な料理は作らないけれど、日々の料理がより美味しくなるように、日々、研究工夫を重ねていく…
まさに、職人の世界だなと感じました。
公務員だけど、たった1組のために…
公務員は、
「全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」
と日本国憲法にも記されていて、全ての国民、市民がお客様になります。
でも、天皇の料理番のお客様は、天皇陛下と皇后陛下のたった1組です。
日々の食事をより美味しく、召し上がっていただけるよう、1組のお客様のことだけを想いながら、日々のお仕事に取り組んでいます。
未来型でも、ブログ記事などをたった1人の届けたい人に向けて、届けていきましょう、
とお伝えしています。
たった1人に向けて届けていくほうが、不特定多数の大勢に向けて届けるよりも、より心のこもった、想いが乗ったものが届けられるからです。
公務員のお仕事は、全ての人に向けてです。
「この人だけに向けて、お仕事をしています」
なんて言ったら、怒られます。
わたしが天皇の料理番が、最強の公務員だと思うのは、公務員でありながら、たった1人(1組)に向けて届けていくということを両立することができるからです。
お客様は神様です
著者の谷部さんは、縁あって天皇の料理番を務めることになりますが、戦後生まれで、元々、天皇陛下に思い入れがあったわけではありませんでした。
そんな谷部さんが、
「生涯、この方一代だけに仕えよう」
と誓うきっかけとなったエピソードがありました。
宮中主催のとある親睦会の立食パーティーで、谷部さんは、来場者の注文を受け、その場で天ぷらを揚げる係になりました。
順調にお仕事をこなしていましたが、ふと気づくと、天皇陛下が目の前に立っています。
「穴子としそを」
陛下は、天ぷらを注文されました。
天皇陛下に直接お声をかけられたのは、この時が初めてでした。
いざ、天ぷらを揚げようとしても、頭は真っ白、心臓はバクバク、手は震え、何百回も揚げてきた天ぷらが思うように揚げられなくなったのでした。
初めて接した昭和天皇のオーラに圧倒されたのでした。
穏やかで優しいお姿の中にも、何とも言えない威厳を感じたそうです。
宮中でお仕事をしている方は、天皇陛下のことを「聖上(おかみ)」とお呼びするそうです。
谷部さんは、初めて、天皇陛下に接したことで、まさにこの瞬間、「聖上」でいらっしゃる、ただ1人の方と納得し、自分がお仕えする人は、この方しかいない。
生涯、この「聖上」お一人にお仕えしようと、心に誓ったのでした。
わたしは、このエピソードを知り、「お客様は神様です」という言葉を思い出しました。
以前、こちらの記事にも書いたのですが、
「お客様は神様です」というと、お客様は神様だから、何でも言う通りにしないといけない…そんな風に誤解されていることが多いです。
でも、本来の意味は、「お客様は自分に力を与え、より成長させてくれる存在」ということでした。
谷部さんも、昭和天皇お一人にお仕えしようと誓った前と後では、仕事に取り組む姿勢にも変化があったと思います。
そんなふうに自分を成長させてくれるお客様が、本当のお客様です。
そんなお客様に出会えることも、簡単ではなかったりしますし、ましてや、そのお客様が天皇陛下というところが、本当にすごいことだと思います。
本当にやりがいを持って仕事をするということ…
そんなふうに、
「この聖上(おかみ)のために…」
という想いで、天皇の料理番を続けてこられた谷部さん。
1989年1月7日、昭和天皇が崩御されました…。
以前に、この「聖上」1人にお仕えしようと誓った信念を貫いて、すっぱりと仕事を辞めました。
次の天皇陛下にお仕えすることもできますし、周りから引き留められました。
まだ、40代前半で、幼い子どもも2人いる…
数年前、ローンを組んで家を購入したばかり…
「天皇の料理番」という肩書きを失った婿を妻の親はどう思うだろうか…
普通なら、これでもかというくらい退職を選ばない理由が並んでいます。
それでも、谷部さんは自分の信念を貫いて、悩むことなく、退職したのです。
わたしはそのあまりの潔さに武士道のようなものを感じました。
わたしなりに、谷部さんが、潔くお仕事を辞めることができたのか、考えてみました。
職人として日々料理の腕を磨き続け、自分をより成長させてくれる神様のようなお客様のためだけに、精一杯、仕事に取り組んできた。
もうやり切った、やり残したことはない。
そんな風に思うことができたのではないでしょうか。
そして、そんなふうにお仕事ができたからこそ、お金のため、生活のためだけじゃない、さらに上のステージでお仕事ができていた。
本当にやりがいを持って仕事をするということが、どういうことなのか、わかっていた。
だから、お金や肩書きのことで、悩むことなく潔く退職できたのではないか、と思いました。
ちなみに、その後の谷部さんは、
執筆、講演、料理教室主宰などの活動の傍ら、テレビ出演や大学非常勤講師などをされています。
「この人ために」と思える方に届けることで、自分自身も成長しながら、本当にやりがいを持ったお仕事をすることができる。
から得た気づきをお伝えしたいと思います。
興味を持たれましたら、ぜひ読んでみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!!